白昼夢旅日記

死の恐怖に抗う為、旅した世界達の記録

Hello new world 2

「御身の力で村の者達に加護をお与えください」

 

続き

 

と言われても何をするべきか分からなかった。

手に持った7色の石は何も反応を示さず、困ってしまう。

そんな様子を見た村の人達はヒソヒソと話し合っている。

「本物…だよな?」

「そりゃ目の前で見てたし…大丈夫だろ?」

「もしや姫の記憶にも問題が…」

ザワつきを止めたのは長の一言。

「あの…この者にその石を与えてみてはくれませんか?」

青と目を合わせ前に出てきた女性の手に石を置くが反応はない。

色が悪いのかと全て試すが変化はなし。

男性にも試してみたが同様。

場がまたザワつき始めたことで青にだけ聞こえる声で話す。

「もしかしてレイカちゃんじゃないからダメなのかもしれない…」

石を手の平で転がすが変わらず反応はない。

「私じゃダメだったんだ…こっちはレイカちゃんの世界だもん。この体にレイカちゃんがいないから、本来の主がいないせいで力がないのかもしれない…」

 

無とレイカは同一人物であり、異なる存在。

無は何もできない自分が悔しかった。

可愛くも頭が良くもない。すべてにおいて下から数えた方がよい最下層の人間。

友達の裏切りや嫌がらせに疲れた心が生み出した世界。

そこの神がレイカである。

イカの記憶も曖昧であった。

名乗りは ふぅ 自分が誰か分からなかった。

ふぅは旅を続けるうちに記憶を取り戻していくが、無は彼女の存在が完璧すぎるがゆえに否定し、名を与えた。

無が創ったはずのレイカはふぅとしてそのまま各地各世界各次元を旅したが、無の心は壊れてしまった。

否定しようとも無とレイカは同一である。

無の不安がレイカの体を壊し蝕む。

イカは新しい体で目を覚ましても本体の損傷が止まることはなかった。

そしてレイカが最後に創造した階層世界フィーに無はアバターを用意しレイカとは別の体でレイカの世界へと入った。

イカは本体に戻り修復を試みる、

無の心が晴れるまで、治らない体にて。

この世界は死者をも呼び寄せる。

死者の為の6時間、住人の為の24時間。

そこに呼んだ3人とその世界で生まれた2人、そして無は新たな世界へと足をふみいれた。

 

Hello new world

 

と、レイカとの話が半端に長くなってしまったが。

自分に自信がないゆえに無彩色の姫としての力がないことに落胆する。

青もどう接しようか悩んでいる様子。

零れ落ちそうになる涙を止めようと顔を上げると遠くにいくつかの強い光が見える。

「何…あれ?」

「ん?何も見えないけど?」

「あそこだよ! ほら光ってる赤と青。こっちは白と虹。あっちは赤で…他にも小さな光がみえる!」

青は目を凝らすが本当に何も見えないらしい。

その様子に村の人の表情は明るくなる。

「やはり無彩色の姫は本物に違いありません! その光は姫のみが見る事の出来る色持ち達の光です」

青とはっとしたように顔を見合わせる。

小さな声で確認しあう。

「赤と青ならきっと紫!」

「白と虹はイシスとレインのどっちかだね」

「待って…赤青の横に黒くモヤっとしてる部分があるんだけど…もしかして黒かな?」

別々で来た残りの4人に関する色を見つける。

他はきっとここの住人達だろう。

色持ちでもその強さで光の強さは違う。

あんなにはっきりとしているなら青のように世界に選ばれたのだろう。

イカがいないことで偽物かと落ち込んだが、姫のみの目を有していたことにより心は少し軽くなった。

 

 

キャアアアアアアアアア

 

村の端から悲鳴が聞こえる。

小さな村は、その方向を見ればすぐにわかる。

いつの間にか大きなゴーレムが村に近づいていた。

ゴーレムは赤い光を纏い村を溶かし近づいてくる。

 

それを確認した村に住む二人の色持ちが立ち向かっていく。

「おれも加勢してくる」

戦えない村人と共に下がっているよう言われ従う。

青は石の力を引き出し、石を宿した2匹の獣を立ち向かわせる。

さらに自身の口元に石を寄せると石は光の円を放つそこに向かい叫ぶ。

「ぶっとべぇぇぇええええ」

どこかで見た事の…いや見た事ありすぎる力…

先程の動物も…彼もそんな力に憧れがあったのかと少し笑う。

色持ちの2人も合わせ技で応戦している。

本来ありえないはずの炎の木を思わせる緑の風の枝それに葉をつけたかのような赤の炎。

2色は混ざることなくゴーレムの力を押し返す。

村人達は青の力が珍しいようだ。

色持ちは色から連想される、火・水・風・雷といった自然に近い形を用いるが、青は自身の意思で自在に動く獣だったり波動であったり特殊な用い方をしている。

 

一見優勢に見えていた戦況は、増加するゴーレムによって覆される。

「うわっ!?」

青は間一髪のところで攻撃を防ぐが吹き飛ばされる。

「青! 大丈夫!?無理しないで」

「いたっ…、こんなハズじゃ…もっとうまくできると思ったのに…」

見ると青の獣2匹も砕けている。

落ち込む青は、少し体が震えている。

「青…ここはフィーとは違う。あっちなら蘇生も痛みをなくすこともできるけど、ここは…この世界で死ねばここでの青はそのまま死んでしまうの。レイカちゃんがいればきっと対処できるけど…ごめんね。私じゃ無理なの。だから…怖かったら……逃げよう」

「姫! 危ない!!」

誰かの声に近づく気配に視線を向ける。

「ダ…ダメ!」

青をかばうように覆うと同時に青は防御癖を張る。

 

ドンッ

 

なかなかこない痛みに振り返るとゴーレムは吹き飛び転倒している。

「まさか…」

青に目を向けると青も目を見開いている。

「え…や…一応防御しておこうと思ってだしたら全身保護できたし、なんなら跳ね返して…こんな小さい欠片なのに…」

その時青が使ったのは小さな欠片。

色彩石は大きければ大きいほど力も増す。

使い続ければ消耗するし、砕けて力が無くなってしまう可能性もあるもの。

それが小さな欠片でさっきまでとは比べ物にならない力を発揮する。

「もしかしてこれが私の…」

青が飛ばされ転倒したときに落ちていた大き目の青い石を拾う。

「青! これ持ってあの子出してみよう」

青に渡した石に自身の手を添える。

「おっきい子いっちゃお!」

青はそれで分かったのか

「火には水!」

「そう!」

怯えていた表情は希望を取り戻し強い意思を持つ。

「「〇〇〇〇〇」」

その獣は水をはき、燃えている村を鎮火し、ゴーレムを破壊する。

想像を超える大きな力だったのか、赤いゴーレムの特性か爆発が起きる。

「え…」

「ちょ…」

 

 

 

ここまで